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字幕付きCMが全放送枠、全民放局で放送可能

2022年8月2日掲載


8月1日の昨日、暑さにへばる中、何と強烈なメッセージが飛び込んできたのです。
発信者は「字幕付きCM普及推進協議会」です。略称、字幕CM協議会は、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(JAA)、一般社団法人日本民間放送連盟(民放連)、一般社団法人日本広告業協会(JAAA)というメンバーで構成されています。 よくご覧ください。JAAは広告を出そうというスポンサー企業の集まり、民放連は広告を伝える民間放送事業者がすべて集まる組織、JAAAは広告主と民放局の間をつなぐ広告会社の団体です。つまり、テレビCMを扱うすべての関係者が一堂に集まる推進組織なのです。
ここまで説明してくると、「どうせお上に言われて仕方なく集まる組織でしょ」という声が聞こえてきます、そういう人、「喝!」です。目は節穴かと疑い、事実を見ないで決めつける一番危険な付和雷同の発想かと思い直してください。
まず、このサイトの動画を見てください。ニューメディアのサイトからリンクしている「字幕付きCM5つのお話(動画)」です。先の字幕CM協議会がYouTubeに公開している動画です。 https://www.jaaa.ne.jp/jimaku_cm_cp/

5つの話しとは、
第1話「聴覚障害者の声」国際ユニヴァーサルデザイン協議会篇
第2話「字幕付きCMの意義」日本アドバタイザーズ協会篇
第3話「字幕付きCMの意義やロードマップ」「テレビ局が字幕付きCMを放送するまでの流れ」日本民間放送連盟篇
第4話「字幕付きCM概論」「商流、字幕ハンドブックなどの紹介」日本広告業協会篇
第5話「字幕付与制作作業の実際」日本広告業協会・日本ポストプロダクション協会篇
で、各話は15分~20分です。
各組織を代表した皆さんが話した内容は、2014年の協議会がスタートして積み上げてきた上での自らの言葉で話しています。この3団体は、ときに相反する点を自らで乗り切ってきています。

テレビCMに字幕を、という声は聴覚障害者を中心に始まり、今では音が出せない中でもテレビ放送を見ることができるとか、高齢の難聴者に便利という理解が広がり、放送局自身が「メタデータとして使える」という利点に気づいてきています。 また、AI技術の最先端は、CESやNABという世界のメディア技術展示会でも、音声認識による字幕化を競い合っています。日本語の扱いにも優れた海外の会社も出てきています。
そういう中、CMという企業が消費者に伝えるメッセージが「聞こえない、聞こえにくい」という気づきにくい伝わり方の問題に向き合った、それが字幕CM協議会なのです。
では、どういう段階を示したかを紹介します。
「字幕付きCM普及推進ロードマップの最終ステップ(ステップ4)に移行する方針を決定しました。2022年10月から、すべての放送枠<ネットタイム枠・ローカルタイム枠・スポット枠>において、字幕付きCM受け入れを開始します」
ロードマップのステップ1は、2020年10月に関東エリア5局で「ネットとローカルのタイム枠」で始まり、その後ステップ2、3と進み、2022年7月、充分な運行上の知見が蓄積されていることを3団体で確認して、8月1日の宣言に進んだのです。

そのリリースには、以下のようにあります。
・3月に字幕付きCMは有効なマーケティングツールであることを検証するための調査「字幕付きCMに対する評価、効果等に関する調査2022」を実施。
・その調査結果を反映し、広告主に字幕付きCMの制作を提案するためのツール(チラシデータ)を作成。
・字幕付きCMに関する情報を集めた「字幕付きCMPORTALWEBSITE」を6月に設置し、広告会社の理解を深め、広告主に提案ができる体制を整えた。
・民放連とJAAAは7月に字幕付きCM素材搬入基準を改訂し、広告主、広告会社、民放事業者それぞれの作業負担を軽減するため、事前確認の提出資料を簡素化。

そして、こう結論づけています。
「字幕付きCMは、放送する環境が着実に整いつつあり、広告主にとってESGG経営の身近な施策の一つとなっています」
気候変動問題や労働問題など世界的な社会課題が顕在化している中、企業が長期的な成長をしていくために、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」を考えた経営で、字幕CMはその「見える」施策の一つということなのです。

●テレビを見るとき、リモコンにある「字幕ボタン」をオンにして見ましょう。CMの画面の右肩に「字幕」の文字マークがある企業のCMは字幕が表示されますので。

(吉井勇  株式会社ニューメディア出版局長/月刊ニューメディア編集部ゼネラルエディタ-)