手話と字幕

字幕があればOK、ではありません


多くの人はテレビ番組や動画などには、日本語を字幕にすれば聴覚障害者でも理解できると思っていることでしょう。 でも聴覚障害者のなかには手話を母語としているろう者も多くいます。 つまり、字幕を必要とする人、手話を必要とする人、それぞれいるのです。



字幕と手話について
手話は言語です 手話とは日本語とは異なる語彙・文法体系を持った独自の言語です。 2006年国連障害者権利条約に「手話は言語」と表記され 2011年改正障害者基本法で「言語(手話を含む)」とあります。 つまり、手話は日本語や英語と同等に言語のひとつでもあるのです。

字幕とは? 日本語の音声をそのまま文字表記したものです。

手話言語条例とは?

手話を独自の言語体系を言語と位置づけ、聞こえない人と聞こえる人が互いを理解し尊重することをめざし、2013年に鳥取県が全国で初めて制定しました。
全日本ろうあ連盟のホームページには「手話言語条例マップ」があり、手話言語法の条例の全国的な動きを地図にまとめたものがあります。
このホームページによると、条例成立自治体は36都道府県/19区/342市/94町/5村 計496自治体(2023年7月7日現在 事務局把握分)全国への広まりが見て分かります。
◆一般財団法人全日本ろうあ連盟ホームページより
https://www.jfd.or.jp/sgh/joreimap


テレビにおける字幕放送と手話放送

テレビ番組では、2011年東日本大震災以降首相官邸の記者会見等で、手話通訳がつく様子を目にする機会が増えました。
しかし現実的には手話放送はまだまだ少ない現状があります。

テレビにおける令和2年度の字幕放送の実績では、総放送時間に占める放送番組の字幕番組の割合としてNHK総合88.7%、NHK教育82.6%、在京キー5局65.8%です。
それ以外の地方局ではすべて65%以下ではありますが、着実に字幕放送は増えています。
一方で手話放送は、一週間当たりの放送時間(一局当たりの平均)は、NHK総合43分、NHK教育4時間26分となり、在京キー5局やそれ以外の地方局は約20分です。

2021年8月に開催された東京五輪の開会式では、字幕放送はありましたが手話放送がないことが問題になりました。
コロナ禍で外出を控えて「テレビで観戦を」と呼びかけ、更に「全ての人が、誰一人取り残されることなく尊重されるオリンピック」と謳っている祭典の開会式のテレビ放送で、 手話を母語とする言語的マイノリティのろう者は取り残されたのです。
直後に、多くの関係団体や個人が要望を伝えた結果、閉会式当日のテレビ放送では、NHK総合では通常放送(字幕あり)、
NHKEテレでは字幕、手話、音声解説付きというユニバーサルな放送となりました。



ACジャパンの取組み

ACジャパンでは、2018年からあらゆる人に伝わるCMをと、全国キャンペーンで選ばれたCMに、手話と字幕を入れる情報保障の取り組みを開始しています。
聴覚障害のある当事者数名が監修となり、字幕の読みやすさと、手話を母語とするろう者の「手話アクター」を採用した手話を入れたのが特徴です。
CMを伝えるために、字幕も手話も両方取り入れたモデルケースです。

2018年「その危険見えてますか」
◆第57回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール テレビ広告部門 メダリスト ラジオ広告部門 メダリスト

https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=768&page=2&sort=businessyear_default&campaignclass%5B%5D=10

2019年「防災さんぽ」

https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=792&sort=businessyear_default&campaignclass%5B%5D=10

2020年「見えないフリ」

https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=823&keyword=%E8%99%90%E5%BE%85&sort=businessyear_default&campaignclass%5B%5D=10

2021年「プラ島太郎」

https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=844&page=1&sort=businessyear_default&campaignclass%5B%5D=10

2022年「寛容ラップ」

https://youtu.be/j4rRKb74-rg

2023年「白紙の未来」

https://www.ad-c.or.jp/campaign/self_all/self_all_01.html




字幕も手話も必要という考え

CM字幕プロジェクトではこれまで「字幕」をメインに活動してきましたが、手話を母語としている人が日本語の字幕を理解しようと思うと外国語を読むような感覚になります。 その点手話であれば、手指の動きだけではなく顔の表情や動きの強弱で言葉のニュアンスまで表現できます。
ですから手話を母語としている人にとっては字幕だけでは不十分であり、手話という言語が必要になるのです。
今後はだれもが情報にアクセスするために、「字幕も手話も両方必要」という考え方が重要になってくると考えています。