ひとりの人間が一歩一歩足を動かして動き回るのであれ、車両輸送の支援を受けるのであれ、家の中やコミュニティの中を動き回るには、無数の挑戦に日々直面しなければならない。
教育や雇用、娯楽や住宅メンテナンス、日常生活の介護や旅行といった目的のために私たちが生活の中で移動することの役割は、自立の問題と生涯にわたる自立という目標につながるものである。
個人輸送や大量輸送におけるアクセシビリティの実現は、コインの片面に過ぎない。すべての人々、またあらゆる年齢や能力のニーズに応える移動形態を適切に編成するための要件を達成するには、政府と産業界がユニヴァーサルデザインの包括的な解決策を受け入れなければならない。
本発表では、世界の人々の要求や期待を検討し、革新的なデザインとエンジニアリングにとっての機会について話し合う。また、製品や環境努力の実施や利用を助ける財政やサービスについて、考慮すべき点を幅広く取り上げる。実例として、ボーイング、日本航空、近畿車輛、トヨタ自動車の取り組みを紹介する。
福岡市営地下鉄七隈線は2005年2月に開業したばかりの新しい地下鉄です。私たちはこの地下鉄の駅や設備、車両、サイン、車両基地などのトータルなデザインを開発しました。デザインプロジェクトは開業の10年前である1995年にスタートしましたが、最初の1年間はさまざまな利用者の調査を徹底的におこないました。私たちはこの調査から地下鉄を利用するためのバリアが2種類あることを理解しました。ひとつは「移動に関するバリア」、もうひとつは「情報に関するバリア」です。「移動に不自由を感じる人たち」とは身体に障害をもつ人の他に、高齢者、妊婦、子どもを連れた人、荷物を持っている人たちです。「情報の受発信に不自由を感じる人たち」とは、目や耳に障害を持っている人たち、知能に障害をもっている人たち、高齢者や外国から来ている人たちです。私たちはこのプロジェクトで、すべての人が使いやすい地下鉄を実現するための数多くのデザイン、システムを開発しています。今回の発表ではそのうち以下の6項目のデザインについてご報告します。